「ほんとうに私を置いて行ってしまうのね。」
女の声がかすかに震えた。
「もうきっと会うこともないわ・・・。」
朝の光はもう十分明るく降り注いでいるのに、あたりはしんと冷たい。
「そんなこと言わないで。またいつか会えるよ。ボクは優しいキミのことずっと忘れない。」
少しくぐもった、湿り気のある甘い声。
ああ、そうだ。
この声が私は好きなのだ。
女はのどに熱くこみあげるものを飲み込んだ。
「ねえ。
最後にお願いがあるの。」
「手をつないでくれる?」
さよなら。私の大好きな人。
あなたが三田に行っても、私、ずっと好きでいる。
この日のことも、ずっと覚えてる。
そして、
最初で最後のツーショット。
作り笑いには見えないわ。
私の名演技にオスカーをちょうだい。
・・・っ つかさー、
私たち、お似合いすぎじゃね?